光や動力を得たり、有用な計算をさせるために、電気素子を電気伝導体で繋いだものを、電気回路という。電気回路は、抵抗器、インダクタ、コンデンサ、スイッチ、変圧器、その他の電子部品などから成る。電子回路には半導体などの能動素子が使われており、非線形な挙動を示すため、それを表すには複素解析が必要である。最も単純な電気回路部品は受動素子でかつ線型性を示すもので、一時的にエネルギーを蓄えられるが電力源は含まず、入力に対して線形に反応する[49]。
抵抗器は最も単純な受動素子である。名前が示す通りそれを通る電流に対して電気抵抗を示し、エネルギーの一部を熱に変換する。電気抵抗は導体内を電荷が移動する結果生じる。例えば金属では主に電子同士やイオン同士の衝突によって電気抵抗が生じる。電気工学の基本法則であるオームの法則によれば、抵抗器を流れる電流はその両端の電位差に比例する。多くの物質の電気抵抗値は、広範囲の温度や電流値に対してほぼ一定である。抵抗値の単位オームはゲオルク・オームに因んで命名されたもので、ギリシア文字 Ω で表す。1Ωの抵抗器に1ボルトの電位差を印加すると1アンペアの電流が流れる。
コンデンサは電荷を蓄える機能を持つ素子で、蓄えた電荷によって生じた電場にエネルギーを蓄える。概念的には薄い絶縁層を2枚の導体の板で挟んだ形状で、静電容量を増すために体積に対して表面積を増やすべく、実際には金属薄膜をコイル状に巻いている。静電容量の単位ファラドはマイケル・ファラデーに因んで命名されたもので、F で表す。1ファラドのコンデンサに1クーロンの電荷を蓄えると1ボルトの電位差が生じる。コンデンサを電圧源に接続すると、最初は電流が流れて電荷が蓄積される。しかし、電荷が蓄えられていくと電流は時間と共に減少し、最終的に全く流れなくなる。従ってコンデンサでは定常電流(直流)が流れることはなく、むしろそれを阻止する性質がある。
コイルは一般に導線の巻線であり、そこに流れる電流によって生じた磁場にエネルギーを蓄える素子である。電流が変化するとその磁場も変化し、誘導起電力が生じる。その誘導起電力は電流の時間変化に比例し、その比例定数をインダクタンスと呼ぶ。インダクタンスの単位ヘンリーはジョセフ・ヘンリーに因んだもので、H で表す。1ヘンリーのコイルに1秒間に1アンペアの割合で変化する電流を流すと、1ボルトの誘導起電力が生じる[49]。コイルはある意味でコンデンサとは逆の作用をし、定常電流は自由に流れるが、電流の急激な変化は阻止しようとする。